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「台湾と秋田のつながり」(早川裕道さん-Shanghai)



海外の秋田人コラムリレー(第3回)

「秋田の地域活性化」 ~着眼大局・着手小局~ Vol.2

皆さん、こんにちは!
中国上海市在住の早川裕道(ハヤカワヒロミチ)です。少し間が空いてしまいましたが、アキタ朝大学のリレーコラムを続けていきます。
   
今回は日本の隣国である台湾の話題です。
先月発生した東北地方太平洋沖地震の海外からの義援金では台湾からの義援金が139億円(※1)で一番多くなっています。これは、台湾が親日的であり、また日本との歴史的な交流や経済活動の親密性があり、日本への関心度が高いためだと思われます。

人間も国家も同じですが、一番困っている時に助けてくれるのが最も信頼できる本当の友です。そういう意味では台湾は日本がもっとも信頼して良い、またパートナーとして一緒にやって行ける国・地域であります。

さて、では台湾と地元秋田の繋がりについて一つご紹介致します。
これはあまり知られていないことだと思いますが、秋田の田沢湖と台湾・高雄市(台湾第二の都市)の澄清湖は1987年(昭和62年)姉妹湖となっています。そしてその3年後には田沢湖湖畔には台湾側より「飲水思源(いんすいしげん)」像が贈られ、台湾の澄清湖湖畔には「辰子飛翔の像」が贈られました。(※2)

海外にいて秋田との繋がりのあるものを見つけるのは貴重な経験ですが、自治体や民間レベルではいろいろな交流が行われていることに改めて気付かされます。

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写真: 辰子飛翔の像(台湾 高雄 澄清湖)

次に台湾人に最も親しまれている日本人・八田與一氏について紹介します。
八田與一氏は明治・大正時代の土木技師で台湾の農業地帯で当時アジア最大規模の灌漑事業を成功させた人物です。八田與一氏に関しては、台湾の李登輝氏元総統の講演内容に詳しく紹介されていますので、長文ですが、それを引用させて頂きます。

○台湾の水利事業に尽くした故八田與一氏(李登輝氏の講演原稿より)
~引用開始~

台湾で最も愛される日本人の一人、八田與一(はったよいち)について説明しましょう。
八田與一といっても、日本では誰もピンとこないでしょうが、台湾では嘉義台南平野十五万町歩(一町歩はおよそ一ヘクタール)の農地と六十万人の農民から神のごとく祭られ、銅像が立てられ、ご夫妻の墓が造られ、毎年の命日は農民によりお祭りが行われています。彼が作った烏山頭(うざんとう)ダムとともに永遠に台湾の人民から慕われ、その功績が称(たた)えられるでしょう。

八田與一氏は一八八六年に石川県金沢市に生まれ、第四高等学校を経て一九一〇年に東大の土木工学科を卒業しました。卒業後まもなく台湾総督府土木局に勤め始めてから、五十六歳で亡くなるまで、ほぼ全生涯を台湾で過ごし、台湾のために尽くしました。

(中略)

私の畏友、司馬遼太郎氏は『台湾紀行』で、八田氏について、そのスケールの大きさをつぶさに語りつくしています。

私は八田與一によって表現される日本精神を述べなければなりません。何が日本精神であるか。八田氏の持つ多面的な一生の事績を要約することによって明瞭(めいりょう)になります。

第一のものは、日本を数千年の長きにわたって根幹からしっかりと支えてきたのは、そのような気高い形而(けいじ)上的価値観や道徳観だったのではないでしょうか。国家百年の大計に基づいて清貧に甘んじながら未来を背負って立つべき世代に対して、「人間いかに生きるべきか」という哲学や理念を八田氏は教えてくれたと思います。「公に奉ずる」精神こそが日本および日本人本来の精神的価値観である、といわなければなりません。

第二は伝統と進歩という一見相反するかのように見える二つの概念を如何(いか)にアウフヘーベン(止揚)すべきかを考えてみます。現在の若者はあまりにも物資的な面に傾ているため、皮相的進歩にばかり目を奪われてしまい、その大前提となる精神的な伝統や文化の重みが見えなくなってしまうのです。

前述した八田氏の嘉南大圳工事の進展過程では、絶えず伝統的なものと進歩を適当に調整しつつ工事を進めています。三年輪作灌漑を施工した例でも述べたように、新しい方法が取られても、農民を思いやる心の中には伝統的な価値観、「公議」すなわち「ソーシャル・ジャスティス」には些(いささ)かも変わるところがありません。まさに永遠の真理であり、絶対的に消え去るようなことはないものです。日本精神という本質に、この公議があればこそ国民的支柱になれるのです。

第三は、八田氏夫妻が今でも台湾の人々によって尊敬され、大事にされる理由に、義を重んじ、まことを持って率先垂範、実践躬行(きゅうこう)する日本的精神が脈々と存在しているからです。日本精神の良さは口先だけじゃなくて実際に行う、真心をもって行うというところにこそあるのだ、ということを忘れてはなりません。

いまや、人類社会は好むと好まざるとにかかわらず、「グローバライゼーション」の時代に突入しており、こんな大状況のなかで、ますます「私はなにものであるか?」というアイデンティティーが重要なファクターになってきます。この意味において日本精神という道徳体系はますます絶対不可欠な土台になってくると思うのです。

そしてこのように歩いてきた皆さんの偉大な先輩、八田與一氏のような方々をもう一度思いだし、勉強し、学び、われわれの生活の中に取り入れましょう。

~引用終了~(※3)

現在の世界はまさにグローバル化しており、日本人も世界中を舞台として活躍する時代になっています。日本人が海外において誇りを持って生きるための指針となるモデルが過去に示されているということは素晴らしいことです。

そのような先人の名を汚さないように、また、それを超えられるような壮大な志をもって行動していきたいものです。

早川さんのプロフィール
1970年 秋田県十文字町生まれ
高校卒業後、秋田を離れる。
社会人になってからは、貿易商社、外食産業、製造業などで海外業務に多く携わる。(主に中国関連)
現在は中国上海在住、「秋田の地域活性化」をライフワークとするために活動中。

早川さんの第一回掲載コラム~着眼大局・着手小局~ Vol.2はこちら
http://taroloves2eat.blog70.fc2.com/blog-entry-84.html

【参考資料】
※1: 台湾からの義援金(2011年4月13日時点)
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110418-00000020-mai-int

※2: 国土交通省 東北地方整備局 玉川ダム管理所 WEBサイト
   http://www.thr.mlit.go.jp/tamagawa/02koho/07ronrun/index.html

※3: 李登輝氏の慶応義塾大学での公演予定原稿「日本人の精神」全文 2002年
    http://www.a-eda.net/asia/leelec2002.pdf

 ・台湾基本情報 外務省WEBサイトより
  http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taiwan/data.html
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